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edited by TEA & TREATS
28 May | 2014

Eton mess

第1回目は、イートンメス。メレンゲと生クリームといちごで作る、イギリスの初夏のデザートです。

イートンメス

今年のゴールデンウイーク、吉祥寺・サムエルワルツでおこなわれたイベント「ワニカフェ」でお菓子のお手伝いをしたとき、用意したメニューのひとつがこのイートンメスでした。イートンメスと聞いても、どんなお菓子なのか想像できる人はごくわずか……というか、ほとんどいません。でも、誰かが食べているのを見たとたん、「わっ、おいしそう!」と目が釘付けに。やっぱり、いちごは最強ですね。

イギリス菓子は、ドライフルーツをたっぷり使っていたり、重めで滋味深い(そして地味な)お菓子が多いのですが、イートンメスは軽い口当たりで、見た目もかわいくて、みんなに愛されるお菓子です。イベントでは小さなお子さんも、ニコニコしながらスプーンを動かしていました。

イートンメスの“イートン”は、イギリスの名門パブリックスクール、イートン校のことだそう。“メス”は英語のmess、つまり、めちゃくちゃとか混乱という意味。昔読んだ本では、イートン校の生徒が、ママの用意したおやつをカバンに入れたまま走り回り、開けてみたら中身がぐちゃぐちゃになっていたのがはじまり、というようなことが書かれていました。イギリスの伝統的なデザートで、イギリス料理やお菓子の洋書本にはよく登場します。

でも、イギリスに行けばどこでも食べられるというわけではなくて、初めてメニューの中に見つけたのは、ヨークシャー州ハロゲートの古いティールーム、Bettys。

ずっと食べてみたくて、ようやく出会えた念願の味を堪能していると、ツイードのスーツを着たブリティッシュ紳士のおじいちゃんが近づいてきて、メニューを差しながら、「それは何?」と聞いてきました。「あなたの国のデザートよ」と思いながら教えてあげると、さっそくオーダーし、ひと口食べて、こちらを見てにっこり。中身はイギリス人が大好きなものばかりだから、それは気に入るでしょう。広いティールームを見渡すと、気のせいか、イートンメスを食べている人がさっきより増えたような気がしました。

イートンメス

いちごさえ手に入れば、いつでも作れるイートンメスですが、おすすめは初夏。大粒で値の張る立派ないちごに変わり、小粒で手頃な露地物のいちごがお店に並ぶ、ちょうど今の時期です。いちごのソースは色々な作り方があって、簡単なレシピでは、いちごにお砂糖をまぶしてスプーンの背でつぶすだけ、というものも。反対に、ジャムのようにしっかり煮つめて作るソースもあります。

私はいちごのフレッシュな香りを楽しみたいので、あまり火を通しません。ソースというより、いちごジュースに近いイメージ。日持ちはしないけれど、甘酸っぱくさわやかで、最後までさっぱり食べられる。もちろん、生のいちごも刻んで仕上げにのせます。

イートンメス

メレンゲは、作るのが大変だったら、市販のもので十分。でも、オーブンさえあれば実は簡単だから、一度にたくさん作って、ストックしておくのをおすすめします。メレンゲはサクサク感も大事だけど、口の中ですぐにしゅわっと溶けてしまう軽いものよりも、しっかりと食べごたえがあって、内側はChewy、ちょっとねちっとした部分が残っている方が私は好きだし、イートンメスにも合うような気がします。

メレンゲといちごソース、泡立てた生クリームを用意しておけば、あとは食べる時間に合わせて盛りつけるだけなので、おもてなしにもおすすめ。以前、食事のあとにもかかわらず、「バケツ一杯、食べられる!」と宣言した強者もいました。きっと誰かがおかわりと言い出すはずだから、ソースもメレンゲも、たっぷり用意しておいた方がいいかも知れません。

Recipe

作り方
  1. 〈いちごソース〉を作る。いちごはヘタを落とし、大きければ2等分してボウルに入れる。グラニュー糖とレモン汁を加えて軽く混ぜ、5〜10分置く。フードプロセッサーなどで撹拌し、小鍋に移す。中火にかけ、ふつふつと沸いてきたら1〜2分煮つめ(煮つめ過ぎないこと)、火からおろして粗熱を取り、冷蔵庫で冷やす。
  2. 生クリームにグラニュー糖を加え、ゆるめに泡立てる。
  3. 器に、手で一口大に割ったメレンゲ、ホイップクリーム、いちごソースを順に重ねるように盛りつける。飾り用のいちごを小さめにカットして、いちごソースに軽くあえて最後にかける。 ★いちごソースは密閉容器に入れて冷蔵保存。1〜2日で食べ切ってください。
メレンゲの作り方
  1. 清潔なボウルに卵白100g(約3個分)を入れて泡立て、白っぽくなってきたら、ライトブラウンシュガー(グラニュー糖やきび砂糖でもOK)90gを加え、しっかりと角が立つまで泡立てる。ふるった粉砂糖100gを少しずつ加え、ゴムベラで泡をつぶさないようにしっかり混ぜて、つやを出す。
  2. オーブンの天板にベーキングシートを敷き、スプーン2つを使ってメレンゲ生地を丸く落とす。100〜110℃のオーブンで約2時間乾かすように焼き、そのままオーブンの庫内で自然に冷ます。密閉容器に入れて、常温で保存。密閉力の高い容器なら、2週間位日持ちします。
材料(作りやすい量)

生クリーム 200ml、グラニュー糖 20g、メレンゲ 適宜、飾り用いちご 数粒

〈いちごソース〉
いちご 300g、グラニュー糖 90g、レモン汁 少々