黄色い缶と、おいしい時間

あの人のティータイム

#6  刺繍アーティスト Kanae Entaniさん

Photo:Yuka Uesawa    Text:Momoko Yokomizo

気取らない味わいで、日常に幸せを運んでくれる、アイルランド生まれのキャンベルズ・パーフェクト・ティー。ひとりで飲んでもみんなで飲んでもおいしい、毎日の相棒です。

そんな黄色い缶に魅了された、素敵なあの人とキャンベルズ・パーフェクト・ティーのおいしい時間をあれこれ伺う、この連載。

今回ティータイムについて教えてくれたのは、刺繍アーティストのKanae Entaniさんです。

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刺繍との出会いは紅茶の国イギリス

個展を中心に、ファッションブランドのアートワークを担当するなど幅広く活躍するKanaeさんが刺繍と出会ったのは、イギリスに留学していた頃。美術大学でテキスタイルを学び、卒業後はファッションの仕事で順調にキャリアを積むも戸惑いがあったそう。

「テキスタイルとしての刺繍はファッションの歯車になってしまうことが多く、手応えを得るのが難しいんです。オーダーを受けて手刺繍を施す仕事を経験したとき、相手の反応が分かる面白さを実感。その頃から自分の作品作りを始めるようになりました」。

イギリスで8年間暮らし、日本へ帰国。2011年に初の展示を開催し、本格的に作家として活動をスタート。

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昔からの技術とぬくもりを感じる作風

Kanaeさんの刺繍作品はイギリスの伝統的な技法をベースにしながらも、自由でオリジナルな存在感で魅了。植物や動物、音楽やカルチャーからインピレーションを受けて、現実と空想の間のようなイノセントなデザインを紡ぎ出す。実際の草花にはないロマンチックな色使いにも心ときめきます。

「イギリスでも日本でも、街を歩きながら玄関先の花や道端の植物を眺めるのが好きで作品のモチーフにすることも。ティーポットやカップなど、紅茶まわりのものもデザインによく登場しますよ」

針と糸と布。たったそれだけの材料から、こんなにも素敵な作品が生まれるなんて!

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絵を描くように生まれる刺繍

Kanaeさんにお願いし、実際に刺繍をする様子を見せてもらうことに。ペンでささっと下絵を描き、ひと針ひと針と縫い進めていくのですが、その動作のなめらかなこと!
真っ白なキャンバスに小さな花が咲いていくかのようで、思わず手元に釘付けになりました。

すいすいと手を動かしながらも、そこにはゆっくりと穏やかな空気があって。出産を控え、今はお休みしている教室でも刺繍のそうした雰囲気に惹かれている生徒さんが多いのだとか。

「作業をしながらのおしゃべりも含めて、豊かな時間を楽しまれているのかもしれませんね」

そしてまたたく間に、可愛らしい赤い小花の刺繍が完成!

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ほっとひと休みはミルクティーをいれて

制作中に休憩したり、レッスン後に生徒さんとティータイムを楽しんだり。イギリス暮らしの経験もあって、普段から紅茶を飲むことが多いというKanaeさん。キャンベルズ・パーフェクト・ティーは最近のお気に入りなのだそう。熱々の紅茶にミルクをたっぷり入れるイギリス流のミルクティーがお好み。

「イギリスの人々はあまり紅茶をストレートで飲まない印象があって、わたしも自然とミルクティー好きに。お茶文化が本当に根付いている国で、学生時代の教授は面談中にティーカップを片手になんてことも(笑)。今は夫がリモートワークをしているので、紅茶をいれて一緒にひと息つくことも増えました」

冬はミルクを小さなお鍋で温めて、紅茶に。シナモンスティックをいれることもあるそうで、ぜひ試してみたいアレンジです。

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日常に幸せを運ぶお茶の時間

忙しく始まる平日はマグカップで飲むことも多いけど、休日は、イギリスで買ったヴィンテージのカップ&ソーサーでゆっくりとティータイム。お気に入りのおやつは三軒茶屋にあるカフェ、ニコラのお菓子で、時々テイクアウトするのが小さな幸せになっているそう。

「ニコラのスコーンやショートブレットは粉を感じるザクザク感がおいしい。甘さ控えめの大人な味も好みです。自粛期間は自分でも焼き菓子をよく作りました。刺繍は少しずつしか進まないけど、お菓子は一気にいくつも焼き上げることができて別の楽しさを感じます」

粉ものだけでなく、生クリームたっぷりのケーキも大好きだというKanaeさん。クセのないキャンベルズ・パーフェクト・ティーの味わいは、どんなお菓子にもぴったり合うと太鼓判をいただきました!

早さを求めがちな世の中の流れとは真反対にある刺繍。穏やかな時間が流れるアトリエの風景の中にティータイムが加わると、英国の空気がふわりと漂うようでした。

撮影を終えて

淡い色使い、心をほぐすような優しい表情の動物たちははいつか夢の中で見たよう。小さな針から作り出された作品からは手に取った人をもほっこりと幸せな気持ちにさせてくれる、そんな力を感じました。

Kanae Entani さんプロフィール

刺繍アーティスト。19歳の時に渡英。アーティストのドナ・ウィルソン、リジー・フィンの元でアシスタントをした後に独立し、2011年より活動拠点を日本に移す。近著に『刺繍でABC』(文化出版局)。出産のため一時休止中のオンラインショップは春頃に再開の予定。

http://www.kanaeentani.co.uk